徳島の技術を世界に発信
未来を耕す海の恵 海藻陸上養殖の可能性
海藻ラボの革新的な取り組みとSDGsへの貢献は高く評価され、2025年大阪?関西万博の「未来社会の実験場」ベストプラクティスに選定されました。「海藻が人と海を豊かに、健康に」をテーマに、フューチャーライフヴィレッジのベストプラクティスエリア内にて、その持続可能な陸上養殖システムと、それが切り拓く、食と健康、そして地球環境再生への貢献が、パネルや映像、タッチパネルなどを通じて紹介されています。この出展は、徳島大学発の優れた研究技術を世界に発信する絶好の機会であると同時に、地球規模の課題解決に向けた日本の貢献を示すものとなるでしょう。
▲2025年日本国際博覧会(大阪?関西万博)
バイオイノベーション研究所?岡直宏准教授に聞く
海藻の陸上養殖技術がS D G sに貢献「ベストプラクティス」に選出
私たちの食卓に欠かせない海苔やワカメ。これら海藻は、日本の食文化を豊かに彩るだけでなく、近年ではその栄養価や環境への貢献から、世界的に注目を集めています。
徳島大学バイオイノベーション研究所(B I R C)の岡直宏准教授は、この海藻の可能性を最大限に引き出すべく、革新的な陸上養殖技術の研究開発と、その社会実装に挑戦しています。
その先進的な皇冠比分网_皇冠体育投注-【长期稳定直播】は、注目のベンチャー企業「海藻ラボ株式会社」の取り組みに活用され、2025年大阪?関西万博で「ベストプラクティス」にも選定されました。
▲2025年日本国際博覧会(大阪?関西万博)は、「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに、
4月13日~10月13日までの184日間、大阪市此花区の人工島?夢洲で開催されます。
世界中から約150の国と地域、9つの国際機関が参加。未来社会の実験場として、
持続可能な開発目標(SDGs)の達成やSociety 5.0の実現に向けた先端技術やアイデアを体感できます。
海の課題と陸からのアプローチ
近年、地球温暖化による海水温の上昇や「海の砂漠化」とも呼ばれる磯焼け現象により、天然海藻の収穫量は不安定さを増しています。こうした課題に対し、岡准教授は海況に左右されず、安定的に高品質な海藻を生産できる「陸上養殖」技術に着目。水圏教育研究センター(鳴門キャンパス)を拠点に、海藻の生態や成長メカニズムを深く探求し、持続可能な生産システムの確立を目指してきました。
BI R Cは、バイオテクノロジーを核としたオープンイノベーションを推進し、地域社会や産業界との連携を通じて新たなバイオ産業の創出を目指す研究機関であり、岡准教授の研究はまさにその理念を体現するものです。
▲もともとは海洋深層水に関する研究をしていたという岡准教授。
「海洋深層水によるコンブ類とアワビの陸上タンク養殖システムの研究の際、
昆布だけを食べさせたアワビで作った炊き込みご飯の美味しさは忘れられません(笑)」。
▲岡准教授の研究室の皆さん。
研究室は海が近く、隣は県の水産試験場という、研究にはうってつけの場所だそうです。
学際的な連携が生んだ「海藻ラボ」とJ A S認証
岡准教授の徳島大学における先進的な研究は、大学の垣根を越えた連携を通じて、海藻ラボの設立という形で結実します。
この企業は、徳島県や複数の大学?研究機関が連携し、地域の水産業振興を目指す「マリンサイエンスゾーン」の取り組みから生まれました。
海藻ラボは、太陽光と自然海水を利用した低コストかつ環境負荷の少ない独自の「陸上二毛作養殖システム」を確立。2種海藻を通年養殖しています。これにより、秋?冬?春には緑藻「あおさのり」(徳島文理大学の養殖技術)、春?夏?秋には紅藻「あかねそう®」(別名:海しそ)といった異なる種類の海藻を効率的に生産することに成功しました。
特筆すべきは、この陸上養殖で生産されたあおさのりとあかねそう®が、日本で初めて陸上養殖海藻としての「有機J A S認証」を取得したことです。
これは、農薬や化学肥料を使用せず、厳格な基準に基づいて生産された食品の証であり、消費者からの高い信頼を得ています。
「あかねそう®」は鉄分を豊富に含む栄養機能食品としても注目され、地域の新たな特産品として期待されています。
▲研究室の「あかねそう®」(別名:海しそ)研究室では「あかねそう®」(別名:海しそ)を始め、
スジアオノリなど様々な海藻を実験に使用しています。
珍しい海藻を扱うこともあり、絶滅危惧種のアサクサノリの培養も行っているそう。
▲「あかねそう®」(別名:海しそ)は鉄分豊富な海藻。
2.7gで豚レバー100gとほぼ同等の鉄分が摂取できるので、カロリーを気にするダイエッターにも人気。
海藻ラボのオンラインショップで販売している他、ごはんのお供として知られる
ブンセン株式会社の海苔の佃煮「アラ!」の海しそ版の販売も予定されているそうです。
海藻が拓く多様な可能性
岡准教授の研究は、食用海藻の生産にとどまりません。例えば、陸上養殖された海藻は、アワビなど藻食性貝類の良質な餌としても活用が期待されています。これは、水産資源の安定供給や養殖業のコスト削減にも繋がる重要な取り組みです。
さらに世界に目を向けると、海藻には牛のゲップに含まれるメタンガスを抑制する効果を持つ「カギケノリ」のような種も存在し、地球温暖化対策への貢献も期待される取り組みや、工業原料として海藻に含まれるアルギン酸やカラギナン、寒天などの成分を抽出するための養殖技術などに注目が集まっていますので、海藻の秘めるポテンシャルは計り知れません。
岡直宏准教授からのメッセージ
「元々、観賞用の海藻開発からスタートし、その後、食用海藻の陸上養殖研究へと発展しました。海藻ラボの取り組みは、夏と冬で異なる海藻を効率よく生産できる二毛作システムが特徴で、これがS D G sへの貢献として評価され、万博のベストプラクティスに選定されたのだと思います。
海外でも健康志向の高まりから海藻への関心は高く、日本の高品質な海藻は十分に需要があると考えています。それに加えて、陸上養殖のノウハウは、海藻を増やすことで光合成によって二酸化炭素が取り込まれ、ブルーカーボンが増加することで地球温暖化や海洋酸性化などの環境問題の解決に貢献できる可能性を秘めています。
万博出展は、私たちの取り組みを多くの方に知っていただく良い機会です。学生の皆さんには、ぜひ万博に足を運び、様々な未来技術に触れてほしいと思います。地方大学の研究でも、やり方次第で世界に繋がる可能性があることを感じてもらえれば嬉しいです。そして、身近な自然や食に対して、新たな視点や興味を持つきっかけになればと願っています」。
▲バイオイノベーション研究所 岡直宏准教授
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ディープテックイベント「Imagine if...! Deeptech for the Real World」
徳島大学が有するゲノム編集技術などのディープテックによって、世界が直面する課題がどのように解決されるのか??。そんな未来を描くパネルディスカッションと特別展を開催します。構想?モデレーターは石原佑特任助教。パネルディスカッションには今回紹介した岡准教授の他、総合科学部 山本哲也教授が出演します。またこのイベントは、「徳島ビジネスチャレンジメッセ」の会場にてライブ中継を予定しています。
日時 : 2025年10月9日(木)11:00~16:00
場所 : 関西広域連合催事スペース(大阪?関西万博内)
主催 : 徳島県
提供 : 2025年日本国際博覧会協会
ディープテックプレセッション
「Imagine if...! Deeptech for the Real World」本番に先立ち、登壇者を招いたプレイベントが開催されます。このプレイベントは、国際的な注目を集める万博という舞台を活かし、徳島大学での研究が世界の課題やニーズといかに関わり得るのかについて学ぶ、またとない機会です。
日時 :2025年9月12日(金)10:00~12:00
場所 :四国大学交流プラザ2F(徳島県徳島市寺島本町西2丁目35ー8)
主催 :徳島県
▲徳島県10月産業催事 ディープテックプレセッション